北海道網走の海に到達する真冬のオホーツクの流氷

北海道網走の海に到達する真冬のオホーツクの流氷
1. 流氷とは何か
流氷とは、海面でできた氷が風や海流に流されて移動してくるものです。北海道のオホーツク海沿岸で見られる流氷は、主にオホーツク海北部・サハリン周辺などで生まれ、北風や海流に押されながら南下してきます。
真冬になると、網走・紋別・知床などの海岸に白い氷の群れが押し寄せ、海が一面の氷原のようになります。北海道オホーツク沿岸で流氷が見られる時期は、例年おおむね1月下旬から3月中旬ごろです。ただし、年によって時期や量は大きく変わります。網走市観光公式サイトも、流氷の期間を「例年1月下旬~3月中旬」と案内しています。
2. なぜオホーツク海に流氷ができるのか
オホーツク海は、季節的に海氷ができる海としては、世界でも非常に低い緯度にあります。環境省は、オホーツク海が低緯度で凍る理由として、表層と深層の塩分濃度が異なる二重構造、外海との海水交換が少ないこと、シベリアの寒気が吹き抜けて海水が冷やされることを挙げています。
つまり、オホーツク海は「寒いから凍る」だけではありません。周囲を大陸や島々に囲まれた半閉鎖的な海であり、シベリアからの強い寒気を受けやすく、海の表面が冷えやすい条件がそろっているのです。
氷は11月ごろから北西部ででき始め、冬の進行とともに南へ広がります。北海道大学低温科学研究所の解説でも、オホーツク海では例年11月ごろに北西部から海氷生成が始まり、1月下旬ごろ北海道沖へ達すると説明されています。
3. 流氷はどこから来るのか
よく「流氷はアムール川から流れてくる」と言われますが、厳密には少し違います。アムール川はオホーツク海の低塩分化や栄養供給に関わる重要な存在ですが、北海道沿岸に来る氷そのものは、主にサハリン北東部などオホーツク海北部で生まれた海氷が南下してきたものとされています。流氷科学センター系の解説でも、ブイ調査によって、サハリン北東部の海で生まれた流氷が北海道沿岸に達することが示されたと説明されています。
この氷は、北風に押され、海流に乗り、互いにぶつかり合いながら厚くなっていきます。海岸に近づくと、氷同士が重なったり、押し寄せたりして、白く荒々しい氷原をつくります。
4. 流氷がもたらす「恵み」
流氷は、見た目には冷たく厳しい自然現象ですが、実はオホーツク海の豊かさを支える存在でもあります。
海氷ができるとき、塩分の濃い冷たい水が下へ沈み、海の深いところにある栄養分が表層へ運ばれやすくなります。また、氷の中や下にはアイスアルジーと呼ばれる微細な藻類が育ち、春になると植物プランクトンの増殖につながります。こうしたプランクトンを動物プランクトンが食べ、それを魚が食べ、さらにアザラシ、海鳥、シャチ、ヒグマなどへと命のつながりが広がります。東京農業大学の解説でも、海氷による鉛直混合が深層の栄養塩を表層に持ち上げ、生物生産を活発にすると説明されています。
知床が世界自然遺産に登録された背景にも、この流氷が育む海の生態系があります。環境省は、知床では流氷とともにもたらされる大量のプランクトンを基礎に、海・川・森にわたる食物網が形成されていると説明しています。
5. 見どころ
流氷を見る代表的な場所は、網走、紋別、知床ウトロです。
網走では、流氷観光砕氷船「おーろら」が有名です。船が氷を割りながら進むため、流氷の厚みや割れる音、船体に伝わる振動を体感できます。紋別では「ガリンコ号」が知られ、知床では流氷越しに知床連山を望む景観や、流氷ウォークなどの体験が人気です。気象庁はオホーツク海南部の海氷予想図を12月から5月にかけて更新しており、流氷観光の時期には海氷の接近状況を確認できます。
ただし、流氷は自然現象なので、必ず見られるとは限りません。風向きによって一晩で接岸したり、逆に沖へ離れたりします。また、流氷の上に乗るのは非常に危険で、網走市観光公式サイトも「絶対にやめてください」と注意を呼びかけています。
6. 温暖化と流氷の変化
近年、オホーツク海の流氷は長期的には減少傾向にあります。気象庁は、オホーツク海の最大海氷域面積について、長期的には10年あたりオホーツク海全面積の3.4%に相当する海氷域が消失していると発表しています。
流氷の減少は、冬の景観だけでなく、オホーツク海の生態系、漁業、観光にも関わる問題です。流氷は「冬の名物」であると同時に、海の豊かさを支える自然の仕組みでもあるからです。
7. 結論
真冬のオホーツク海にやってくる流氷は、シベリアの寒気、オホーツク海の地形、海流、塩分構造が重なって生まれる壮大な自然現象です。
それは白く美しい冬景色であるだけでなく、プランクトンを育て、魚を育て、知床やオホーツクの豊かな生命を支える「海のゆりかご」でもあります。厳寒の海を覆う流氷は、北海道の冬の象徴であり、同時に、地球環境の変化を映し出す繊細な自然の指標だと言えます。
(おわり)

